株式会社sustainacraftのニュースレターです。
Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。本記事ではVerraのVCS StandardのメジャーアップデートとなるVersion 5のドラフトの内容をご紹介します。
VCS Standardは、VerraのVCSプログラムで実行される様々なタイプのプロジェクトで共通して利用されるガイダンスです。VCSプロジェクトの原則や、登録に至るまでのプロセス、永続性の考え方、セーフガードに関する考え方など、プロジェクトタイプに関わらず適用される基本的な考え方を定めた文書となっています。弊社の過去のニュースレターでも、単一非原生樹種による植林の可否など、VCS Standardの変更をいくつか紹介してきましたが、それらは基本的にバージョンの小数点部分が変わるマイナーアップデートであり、変更の対象も限定されていました 。今回はメジャーアップデートになりますので、様々な観点での変更が提案されています。
変更点が多いため、複数回に分けてドラフトの変更を紹介できればと思います。今回は特に追加性要件とバッファープールの取り扱いに注目します。
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VCS Standardのメジャーアップデートに対する初回パブリックコメント (Verra)
(出所: Initial Consultation on Version 5 of the VCS Program, 2024年10月23日アクセス, 以下断りのない限り、画像の出所はリンク先のドキュメント)
今回紹介するのは、VCS Standardのメジャーアップデート (Version 4.x → Version 5)のドラフトの内容です。Version 5は2023年の初頭から開発が続けられていましたが、今年 (2024年)の9月にドラフトが完成し、現在初回のパブリックコメント (パブコメ)が募集されています (2024年11月4日まで)。ドラフトは初期的提案であり、今後修正とパブコメを繰り替えす予定となっているため、内容が固まって運用段階となるのは来年後半以降となりそうです。しかし、今からどのような変更が入り得るのかを抑えておくのは、特に初期段階のプロジェクトに投資を考える際には重要と思われます。
前述の通り、これまで弊社のニュースレターでもVCS Standardの改訂は何度か紹介してきましたが、それらは基本的に特定の項目に限定されたマイナーアップデートでした。
一方で、以下は今回のドラフトで検討されている変更点の概要です。メジャーアップデートということもあり、項目は多岐に渡ります。
今回のニュースレターでは、上記の中でもプログラムの十全性 (Program Integrity)と題されるセクションの、特にPrinciples & Fundamentalsを中心に提案されている内容を紹介します。
「Principles & Fundamentals」に関する提案内容の紹介
以下はPrinciples & Fundamentalsのセクションで検討されている変更点に関する背景と提案内容です。このセクションでは以下の8つの点が挙げられています (カッコ内の数字はドラフトのセクションです):
(1.1) VCS Program Principlesの修正
追加性
(1.2) 規制剰余の証明方法の変更
(1.3) プロジェクト法 (“Project method“)の要件の再検討
(1.4) 事前検討の証明の要求
(1.5) 完全性: プロジェクト開始日と事前排出量の取り扱い
(1.6) 保守性: 無視可能な排出の閾値の再検討
永続性
(1.7) AFOLUのバッファープールの管理と損失イベント発生時の手続き
(1.8) バッファー拠出における任意のVCSクレジットの利用の許可
これらの中でも、プロジェクト運営上特に影響が大きいと考えられるのが、追加性に関する「(1.4) 事前検討の証明の要求」と、永続性に関する「(1.7) AFOLUのバッファープールの管理と損失イベント発生時の手続き」および「(1.8) バッファー拠出における任意のVCSクレジットの利用の許可」です。以降ではこれらの詳細を説明します。