株式会社sustainacraftのニュースレターです。本記事はVCM Updates(ボランタリーカーボンマーケットのアップデート)のセクションA(市場動向編)です。
«VCM Updatesの構成»
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 ← 本記事の対象
クレジット発行・償却・投資動向分析
プロジェクトパイプライン分析
詳細解説セクション
自然由来案件への投資案件
クレジット償却企業のケーススタディ
プロジェクトパイプラインケーススタディ
B. 海外の主要規制の動向
はじめに
クレジットの発行・償却・投資動向、及び、案件パイプライン動向について
償却の動向としては、今月はGSの割合が若干増えたものの、引き続きVCSが大半を占めています。発行の動向も先月から変わらず、VCS以外のGS、CAR、ACRの割合が増えている傾向が観察されています。自然由来案件への投資としては、Nikeによる不動産会社と連携したオレゴン州における取り組みが発表されています。
新たなパイプライン案件として、先月に引き続き、VerraのVM0047(陸域の植林・再植林)、VM0042(再生農法など農地管理)、VM0033(マングローブ植林)といった除去クレジットを創出する案件の傾向が続いています。また、Gold Standardの新しいAWD(水田メタン削減)の方法論を用いた案件が複数上がってきているのも特徴的です。Verra以外のスタンダードへの移行を検討しているプロジェクト開発者も多く、今後もパイプラインの動向には注視していく必要があります。
償却企業ユースケースについて
先月(2024年10月)のクレジット償却企業のユースケースとして、本記事では主にファッション業界からChanelとMangoを紹介するとともに、先月取り上げたENGIEと、自然由来ではないものの償却量が大きかったヤマト運輸のケースにも簡単に触れます。
ファッション業界は世界の温室効果ガス排出量の2~4%を占めており、2018年には同業界が2050年までにネットゼロを達成するための道筋を提供する「Fashion Charter」がUNFCCCから発表されるなど、ファッション業界においても温室効果ガス削減に向けた動きが注目されています。
一時期ファッション業界の企業は、オフセットの活用を通じたカーボンニュートラル主張を積極的に展開していましたが、欧州を中心に高まったグリーンウォッシュ批判や規制を受けて、オフセットを活用したカーボンニュートラル主張を控えるようになっています。
本記事ではそうした中で、オフセットを名言していないラグジュアリーファッションブランドのChanelと、積極的にオフセットを名言しているファストファッションブランドMangoによるクレジット償却の動きについて解説します。
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 (Verra)
A-1: クレジット発行・償却・投資動向分析
- 分析対象レジストリー: Verra、GS(Gold Standard)、CAR(Climate Action Reserve)、ACR(American Carbon Registry)
- 対象期間: 2024年10月
- 留意事項: 償却した企業について、レジストリーに対して実名での登録は義務付けらておらず、正確性は保証できない旨ご了承ください。また、レジストリーへの反映には遅れがありますので、今後も本対象期間中について案件の増減やステータス変更の可能性があることにご留意ください。
本対象期間の発行・償却実績は以下のとおりです(括弧内は前年同月比)。
発行実績: 20.75百万(+23%)、うち自然由来3.92百万(+71%)
償却実績: 13.81百万(+52%)、うち自然由来3.50百万(+66%)
<発行された案件リスト>
以下は、本対象期間にクレジットが発行されたプロジェクトの上位10件です。
<償却された案件リスト>
本対象期間に最も多く償却されたトップ10の自然由来プロジェクトの一覧は以下の通りです。
<償却企業リスト>
対象期間中に自然由来プロジェクトのクレジットを償却した上位10社は以下の通りです。
<自然由来プロジェクトへの投資動向>
- 対象期間: 2024年10月
- 留意事項: 自然再生やREDD+、及び、自然由来系のCDR案件に対する投資を取り上げています。また、「クレジット量」や「投資額」については、今後の想定値である場合があります。
10月には、CDRカーボンクレジットへの様々な投資がありましたが、自然由来のソリューションへの重要な投資は以下の1件のみです。
A-2: プロジェクトパイプライン動向
分析対象レジストリー: Verra、GS(Gold Standard)
対象期間: 2024年10月
留意事項: レジストリーへの反映には若干タイムラグがあるため、今後本対象期間についても案件の増減やステータス変更の可能性があることにご留意ください。
用語: 年間ERとは、年間の排出削減・吸収量(tCO2e)のことを指します。
このセクションでは、まず新しいパイプラインプロジェクトを紹介し、その後、前回のニュースレターに反映されていなかった先月のパイプラインでの重要な変更点をレビューします。
<今月分パイプライン>
パイプラインには、すべての種類を含めて合計29件のプロジェクトがあります。自然由来案件に関しては、以下の11件が含まれています。本号では、年間排出削減量が290,944トンと推定されるウルグアイの草地再生プロジェクトであるVCS-5289を紹介します。
<前月パイプラインの重要変更点>
先月のニュースレターでは、9月のパイプラインに11件の自然資本プロジェクトが含まれていましたが、最新のデータ更新後、5件の新しいプロジェクトが追加されました。
本号では、年間排出削減量が100万トンと推定されるインドネシアのIFMプロジェクトであるVCS-5283を分析します。
A-3: 詳細解説セクション
このセクションでは、前述で紹介した償却企業や投資案件、パイプライン案件についての一部案件について、より詳細な解説をしています。
<自然由来プロジェクトへの投資動向>
このセクションでは、先月に発表された自然由来案件への投資に関する内容について紹介します。