株式会社sustainacraftのニュースレターです。Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。今回はGold Standardの農地管理方法論についてご紹介します。
Gold Standard (GS)の農地管理改善によるGHG排出削減・除去プロジェクトの方法論は、Soil Organic Carbon Framework Methodology (SOCFM)と呼ばれます。この方法論には複数のモジュールが含まれており、それぞれが特定の活動に関するクレジットの計算方法を定めています。先週、新たなモジュールとして「牧草地管理 (Managed Pasture)」が追加され、本法論でカバーされる活動タイプは5つになりました。現在カバークロップの利用に関するモジュールも開発中であり、今後対象となる活動はより広がっていくと考えられます。これまで本ニュースレターではGSの農地管理方法論については紹介したことがなかったため、これを機に、牧草地管理モジュールに限らずこのSOCFMの概要を紹介できればと思います。特に、VCSの農地管理方法論であるVM0042との比較を通じて、その特徴を整理します。
なお、2024年8月末現在、農地管理系の方法論でICVCMのCCPの適格審査の対象となっているのは、VCSのVM0042、CARのU.S. Soil Enrichment Protocol、および今回扱うGSのSOCFMです。以下のグラフはそれらの方法論を用いたプロジェクトのパイプライン (=正式登録前)の数を示したものですが、大多数はVM0042プロジェクトとなっていることが分かります。その意味では、SOCFMの存在感は大きくはありません。
しかし、以下でも述べるようにVM0042はかなり複雑であり、それに準拠してPDDを用意することは容易ではない一方で、SOCFMは比較的シンプルです。弊社がディベロッパーと話す中で聞く話として、「元々VCSのプロジェクトとしての登録を考えていたが、方法論の改訂の影響によりGSに変更することを検討する」、ということがあります (これは必ずしも農地管理プロジェクトに限りません)。レジストリーや方法論が変わればクレジット創出量やコストにも影響を与えますので、その意味で、特に初期的なプロジェクトに対して投資検討をする際には、対象プロジェクトタイプの方法論を横断的に理解しておくことも重要であると考えます。
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Gold Standardの農地管理方法論の紹介
(出所: Gold Standard Soil Organic Carbon Framework Methodology, 2024/08/22アクセス)
Soil Organic Carbon Framework Methodology (以下、SOCFM)は2020年から運用されているGold Standard (以下、GS)の方法論です。SOCFMの対象は主に農法の改善プロジェクトであり、それらに対する一般的な要件(例:適用可能条件、対象プロジェクト、排出削減量算定アプローチ)などを定めています。また、SOCFMの下には特定の活動に対するモジュールが設定されており、活動タイプに応じた詳細なガイダンスが提供されています。
以下ではVCSのALM (Agricultural Land Management)方法論 VM0042との比較を通じて、SOCFMの特徴を紹介します。今回は6つの軸、1) 対象となる活動、2) 対象GHGプール、3) ベースラインシナリオ、4) 定量化の方法、5) 不確実性の計算、6) リーケージの計算、7) 削減・除去の区別、について比較します。下の表はこれ以降の比較のサマリーですが、一言でいうと、SOCFMはVM0042と比べて対象プロジェクトや対象GHGプールも限定的で、計算方法もシンプルな作りとなっています。