株式会社sustainacraftのニュースレターです。
Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。本記事では、デジタル土壌マッピングを使用して土壌有機炭素のストックを推定する、現在パブリックコンサルテーション中のVerraの新しいツールを紹介します。
最近、様々なレジストリーにおいて、カーボンプロジェクトの手続き (レジストリーへの登録、MRVなど)にデジタルツールを導入し、炭素プロジェクトの精度、透明性、拡張性、および効率性の向上を目指す取り組みがなされています。今回紹介するツールも、Verraがデジタルツールを自社の方法論に統合するための最新の取り組みの一環です。最近ではこれ以外にも、VCS Standard 5 (検討中のメジャーアップデート)におけるdMRV (digital MRV)の導入などが検討されています。また、Verra以外では、例えばIsometricの森林再生プロトコルにおけるdMRVオプションの枠組みなどが挙げられます。これらについては以下のニュースレターでも紹介していますので、適宜ご覧ください。
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Verraがデジタル土壌マッピング(DSM)用ツールを発表
(出所: Tool for quantifying organic carbon stocks using digital soil mapping: calibration, validation, and uncertainty estimation, 2025年02月28日アクセス)
土壌有機炭素(SOC: Soil Organic Carbon)ストックの増加は、土地管理方法論における排出量削減の重要な手段です。しかし、従来の土壌サンプリング方法は労働集約的かつコストが高く、広大な地域におけるSOCストックの正確な測定が長年にわたり課題とされてきました。
この問題に対応するため、Verra は今月、土壌サンプリング、リモートセンシング、その他の環境データソースを統合し、高解像度でSOCをマッピングするデジタル土壌マッピング(DSM: Digital Soil Mapping)技術を活用したSOC定量化ツールに関する方法論 (“Tool for Quantifying Organic Carbon Stocks Using Digital Soil Mapping: Calibration, Validation, and Uncertainty Estimation in the Verified Carbon Standard (VCS) Program“, 以下、「CN0137ドラフトツール」)のパブリックコンサルテーションを発表しました。従来の土壌サンプリング方法と比べて、DSMはより広範な空間カバレッジを実現し、空間解像度や精度の向上が期待されます。
本ツールは、農地管理改善を目的としたVM0042方法論、および農地のSOCストックを定量化するVCSプログラムの他の方法論と併用されることを想定しています。本ツールに関するパブリックコンサルテーションは、2025年2月20日から4月4日まで実施されます。また、2025年3月7日午前12時(日本時間)には、本ツールの開発を主導したVerraおよびPerennial Climate Inc.による概要ウェビナーが開催される予定です。
DSMモデルとは
デジタル土壌マッピング(DSM)モデルは、多様な環境データを活用して、土壌有機炭素(SOC)ストックなどの土壌特性の空間マップを生成する計算ツールです。DSMモデルは、特定の地点における既知の土壌特性測定値と、リモートセンシング画像、地形属性、気候データなどの対応する環境「予測因子」データを用いて学習され、統計手法および機械学習アルゴリズムを通じて、これらの既知の土壌特性と予測子変数との関係をモデリングします。学習が完了したモデルは、環境データを基にSOCストックの推定を行い、新たな未観測地点への適用が可能となります。例えば、学習したモデルが降水量でSOCを説明するモデルである場合、リモートセンシングによる空間的な降水量データを活用することで、景観全体にわたるSOCを推定することができます。実際のモデルはより複雑であり、SOCの推定には多数の入力変数が関与します。