2025年11月 VCM Updates: Section A
VCM Updates Section A: Voluntary Carbon Creditの市場動向
株式会社sustainacraftのニュースレターです。本記事はVCM Updates(ボランタリーカーボンマーケットのアップデート)のセクションA(市場動向編)です。
«VCM Updatesの構成»
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 ← 本記事の対象
クレジット発行・償却・投資動向分析
プロジェクトパイプライン分析
詳細解説セクション
B. 海外の主要規制の動向
はじめに
今月のニュースレターでは、クレジットの発行・償却実績は、2025年10月のデータを扱います。
クレジット発行実績
2025年10月の発行量・償却量ともに前年同期比で減少傾向です。ラベル付きクレジットの動向については、CORSIAラベルの発行がルワンダのクックストーブ案件で確認されています。Article 6ラベルは、ルワンダに加え、マダガスカル、カンボジアの案件で発行されています。
案件パイプライン動向
10月に新たに登録された自然由来およびREDD+案件が10件、CDR案件が1件確認されました。特にメキシコと米国のIFM案件が最も多くなっています。また、地域的には、ガボンとブラジルのREDD案件、インドのARR案件などが含まれています。9月のパイプラインは、先月のニュースレター発行後に更新され、カザフスタンのALM案件などが追加されました。JCMの観点では、カザフスタンとケニアは特に注目に価し、その理由については後述します。
投資動向
自然由来およびCDR案件への投資は11件確認されました。自然由来の投資では、InSoil(リトアニアの土壌テック企業)とKeyCarbon(カナダのMRVソリューション提供企業)による1億ユーロ規模の再生農業投資や、ペルーの私的投資ファンドRupi Capitalの1,000万ドルファンド設立など、中南米・欧州を中心に自然系プロジェクトへの資金拡大が続いています。
CDRについては、Microsoftが、イギリスの炭素除去企業UNDOのERW案件で、過去最大規模のCO2除去購入を契約するなど、CDRへの需要が高まっています。また、カナダのCDRデベロッパーDeep Skyによる50万トン規模施設への5億ドル投資や、Googleが米国の発電会社Broadwing EnergyのCCS発電所支援など、大手テック企業・スタートアップ双方によるインフラ投資が活発化しています。
特に、AI電力需要の増加とともにデータセンターへの投資とDACなど除去技術への投資が北米を中心に活発になっています。
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向
A-1: クレジット発行・償却・投資動向分析
- 対象レジストリー: VCS(Verra)、GS(Gold Standard)、CAR(Climate Action Reserve)、ACR(American Carbon Registry)、ART-TREES、Puro (Puro.earth), Isometric
- 対象期間: 2025年10月
- 留意事項: 償却した企業について、レジストリーに対して実名での登録は義務付けらておらず、正確性は保証できない旨ご了承ください。また、レジストリーへの反映には遅れがありますので、今後も本対象期間中について案件の増減やステータス変更の可能性があることにご留意ください。2025年第10月の発行・償却実績は以下のとおりです。
発行実績:18.52百万(前年同期比-11.35%)
対象期間のクレジット発行数は前年同期比で減少しており、20百万ユニットを下回りました。
レジストリ別のデータを見てみると、VCSとGSからの発行割合が前年同期と同様に全体の約7割を占めしてます。一方で、ACRの発行割合は減少傾向にあります。
タイプ別には、エネルギー(GSとVCS)が年々増加している一方、非CO2ガス(CARやVCS)と自然再生(主にACR)は前年とほぼ同じ発行量となりました。また、「Other」カテゴリーでは、2024年に通常より多くのクレジットが発行され、そのうち16.5%を安全な飲料水の提供案件が占めていましたが、2025年は同タイプは全体のわずか0.74%にとどまりました。
償却実績:10.87百万(前年同期比-21.29%)
10月の償却は前年同期比に減少しており、11百万ユニットを下回りました。
レジストリとプロジェクトタイプの割合を見ると、今回もVCSが大半を占めしていますが、償却量は減少しています。エネルギーによる償却量が全体の3割以下まで減少した一方、自然再生と非CO2ガスは大幅に増加し、合わせて約5割を占めています。
<発行された案件リスト>
以下に表示されているクレジットのラベルは、すべて各認証機関(レジストリ)から提供された情報に基づいています。したがって、以下にご留意ください。
・方法論自体がCORSIA適格(eligible)・CCP認定(approved)であっても、レジストリ側のデータにラベル情報が含まれていない限り、上記の表ではラベル付きのクレジットとしてカウントされません。
・Article 6ラベルの情報を提供しているのは、VCSおよびGSのレジストリのみです。以下は、2025年10月にクレジットが発行されたプロジェクトの上位10件と、ラベル(Article 6、CCP、CORSIA、Removal)が発行された案件リストです。
発行プロジェクト上位リスト
ラベル発行実績(Article 6)
10月は前月と比べて、プロジェクト数が大幅に増えました。マダガスカルとルワンダのクックストーブ案件、カンボジアのエネルギー効率化案件に対してArticle 6ラベルが発行されています。これまでの累計発行実績を見ると、前述のルワンダのクックストーブ案件(VCS-4150)が全体の約5割を占めています。一方で、10月はマダガスカルのクックストーブ案件が最も多く発行され、62万ユニットが発行されました。
ラベル発行実績(CCP)
CCPラベルに関しては、10月は米国、中国、トルコの廃棄物処理案件のみに対して発行されています。累計では、同プロジェクトタイプからの発行量が 約2割 を占めています。また、前月に最も多くの発行量を記録したウズベキスタンのFugitive Emissions案件については、ニュースレターが記載時点で、10月は4ヶ月ぶりにCCPラベル付きクレジットの発行がありませんでした。
ラベル発行実績(CORSIA)
10月は、前述のArticle 6ラベルが付与されたルワンダのクックストーブ案件(VCS-4150)で、61万ユニットのCORSIAラベルの発行がありました(Phase 1、Vintageは2021〜2024)。 Phase 1(2024〜2026)では、すべてのVintage(2021〜2026)にLoAが必要となります。今回発行が確認されたクレジットについてLoAが求められるため、2023年時点でLoAが発行済みであることを確認しました。
ラベル発行実績(Removal)
最後に、Removalラベルにつきまして、10月にはカナダと米国のIFM案件5つ(全てACR)で発行がありました。今年は初めてカナダの案件からRemovalラベルが発行され、今回は最大の発行量となりました。 これまで、Removalラベルの米国IFMプロジェクトはすべてACR案件であり、発行されたRemovalクレジットの半数以上を占めています。
<償却された案件リスト>
2025年10月に最も多く償却されたトップ10の自然由来プロジェクトの一覧は以下の通りです。
一番償却が大きかったのは、ウルグアイの植林案件(VCS-960)で、72万ユニットを超える償却が確認されました。同案件としては、これが過去最大の償却量となります。
<償却企業リスト>
2025年10月に自然由来プロジェクトのクレジットを償却した上位10社は以下の通りです。
最も多くを償却した企業はイギリスのプロフェッショナル・サービス事業であるEYで、その数量は55万ユニットでした。同社はこれまで、REDDおよび自然再生案件に累計292万ユニットを償却しています。その中には、インドネシアの大規模プロジェクトであるKatingan案件(VCS-1477)やウルグアイのGuanaré案件(VCS-959)も含まれています。
<自然由来とCDRプロジェクトへの投資動向>
- 対象案件: 自然由来及びCDRに対する投資を取り上げています。
- 対象期間: 2025年10月
- 留意事項: 「クレジット量(Credits)」や「投資額(Group investment)」については、発表された数字のみを記録しているため、空欄がある場合があります。また、この表でのBeneficiaryとは、投資をした企業やクレジットを購入する側の企業を指し、Investment intoとは、投資対象がプロジェクトなのかファンドなのかを示しています。10月には、自然由来とCDRのプロジェクトへの重要な投資が11件ありました。こちらの内容については、A-3: 詳細解説セクションをご覧ください。
A-2: プロジェクトパイプライン分析
- 対象レジストリー: VCS(Verra)、GS(Gold Standard)、CAR(Climate Action Reserve)、ACR(American Carbon Registry)、ART-TREES、Puro (Puro.earth), Isometric
- 対象案件: 自然由来及びCDRに関するパイプライン
- 対象期間: 2025年9-10月
- 留意事項: レジストリーへの反映には若干タイムラグがあるため、今後本対象期間についても案件の増減やステータス変更の可能性があることにご留意ください。
- 用語: 年間ERとは、年間の排出削減・吸収量(tCO₂e)のことを指します。このセクションでは、自然由来およびCDRに関し、先月の新しいパイプラインプロジェクトおよび、前回のニュースレターで紹介した先々月のパイプラインの更新情報をカバーします。
なお、当データベースにおける申請日(Listing Date)は、レジストリから直接取得したもの、または推定によるものです。そのため、データの網羅性・正確性は保証するものではありませんのでご留意ください。
<自然由来案件パイプライン>
2025年10月のパイプラインには11件のプロジェクトが、9月のパイプラインは先月のニュースレター発行後に更新され、現在は21件のプロジェクトが含まれています。
この2ヶ月を通して、案件数としてはIFM案件が一番多くなっています。その多くがCARのメキシコ(5件)とACRの米国(4件)の案件、次にカナダとインドの案件です。
10月のパイプラインには、ガボンとブラジルのREDD案件、モンゴリア、アルゼンチンとインドのARR案件などが含まれています。レジストリでの情報共有にはタイムラグが生じることがあるため、9月のパイプラインは前月のニュースレターが記載時点からさらに8案件が追加され、カザフスタンのALM案件、 インドネシアと米国のIFM案件、マラウィのARR・REDD案件、マダガスカルやケニアのARR案件などが追加されました。
カザフスタンのALM案件は、9月のパイプラインの中で最も多くのERを占めています。同国は2023年にJCMの署名国となりましたが、現時点では承認済み・審議中の方法論はありません。しかし今年に入り、日本との協議が進展しています。例えば、1月の第1回合同委員会が開催され、また8月の外相会談ではJCMの活用促進に向けた議論が行われました。さらに、11月1日には新たなプロジェクト・アイデア・ノート(PIN)様式が公開されており、今後のプロジェクト提案に向けた準備が進んでいる可能性があります。
一方、ケニアにも注目する価値があります。












