株式会社sustainacraftのニュースレターです。本記事はVCM Updates(ボランタリーカーボンマーケットのアップデート)のセクションB(海外の主要規制の動向編)です。お問い合わせはこちらまでお願いいたします。
本記事では、2025年9月から10月にかけて発表された主要な炭素関連政策の動向に関し、以下の項目に沿ってお伝えします。
毎月お届けしているパリ協定6条2項、6条4項に関する動向サマリの他、今月31日に開催するIGES様との共催ウェビナー、タイの事例に見るNDC中・外の議論や6条4項におけるREDD+の位置付けに関する考察ついてお伝えします。
COP30を前にIGES様とウェビナー共催(10/31):ネイチャーを企業戦略にどう活かすか(link)
パリ協定全般
パリ協定6条2項(二国間協力)
パリ協定6条4項(パリ協定クレジットメカニズム(PACM))
考察:タイの事例から見る、6条はNDCの中、外?
考察:PACMにおけるREDD+の位置付け
キーワード: 6条, NDC, JCM, REDD+, COP30, ネイチャー
本記事は、梅宮知佐が執筆しています(地球環境戦略研究機関(IGES)や国立環境研究所勤務後、2025年7月より当社に参画しています)。
COP30を前にIGES様とウェビナー共催:ネイチャーを企業戦略にどう活かすか
11月10日〜21日、ブラジルのベレンでCOP30が開催されます。ブラジル政府はアクションアジェンダを定め、企業等、政府以外のアクターも含めた実施の重要性を訴えています。COP30を目前に控えた国際的な議論の潮流を踏まえ、カーボンクレジット市場の動向、サステナブルなサプライチェーンへの転換、GX-ETS(排出量取引制度)開始後の日本企業を取り巻く状況などを取り上げ、森林や自然に基づく解決策(NbS)をどのように企業戦略に活かせるかについて、IGESの「生物多様性と生態系サービス」分野の専門家と当社が議論します。
10月31日(金)14:00-15:30「企業の成長を支える森林と自然に基づく解決策(NbS):カーボンクレジット活用とサプライチェーン戦略」
お申込みは、こちら(link)からお願いいたします。ぜひこの機会に奮ってご参加ください!
6条全般
次期2035NDCの発表に合わせて、6条に基づく国際的な炭素市場を通じた資金調達を活用すると表明した国が続けて出てきています(パキスタン(link)、バングラデシュ(link)、スリランカ(link)、フィジー(link)、アルゼンチン)
キューバは、国内のカーボンプロジェクトに対する承認体制、登録簿、専門技術的ユニットを6条にも対応する国内体制と発表しました(link)。
インドは6条の対象とする活動リストからクックストーブを新たに除外すると発表しました(link)。
NDC実施にあたって、6条を国際的支援を取り付けるためのチャンネルとして明確に活用しようとする国が増えています。とりわけ自力ではなかなか制度構築が難しいであろう小国、例えばバングラデッシュなどでは、JCMの取り組みが具体的な案件形成やクレジット創出の基盤となると期待できます。
パリ協定第6条2項(二国間協力)
台湾はパラグアイと6条下の協力を進めるためのMoUに署名しました(link)。
シンガポールとモンゴルは、6条下で炭素クレジットを通じた協力を実施するための合意に署名しました。これはシンガポールにとって10番目の二国間合意です(link)。
チリはスイスとの二国間合意の下、初めて6条2項の活動としてプロジェクト承認を行いました。これは、南米カリビアン地域で初めのことです(link)。
ジンバブエが、Gold Standardのレジストリーでクックストーブの案件を対象に、相当調整適用済みのクレジットを取得しました。CORSIA適格のクレジットとしては、ガイアナの管轄REDD+クレジットに次いで2番目の事例となります(link)。
6条2項のプロジェクト承認や相当調整適用済みのクレジットの取得など、6条2項の活動が(単なる)意向表明から具体的な実施レベルの段階に移行し、実際の資金動員に至り始めていることが分かります。森林・自然系プロジェクトについては、まだまだプレーヤーが限られていますが、多くの国が直近のNDCの目標年を2030年としていることから、この傾向はより多くの国を巻き込み、2030年に向けて進んで行く可能性は十分にあります。
パリ協定第6条4項(パリ協定クレジットメカニズム:PACM)
国連のPACMに関して、活動サイクル、方法論及びCDMの移管にに関する炭素市場ルールの技術的文書が発行されました(link)。10月に発行された方法論に関する文書は以下の通りです。
メカニズム手法における“非永続性および反転(リバーサル)”への対応スタンダード
第V.B章(方法論)の要件の、第6.4条メカニズムの方法論の開発と評価への適用
第6.4条メカニズムの下での除去活動に関する要件
これら方法論については、本ニュースレターの方法論編でも今後深掘りして参ります。
考察:タイの事例から見る、6条はNDCの中、外?
上述の動向サマリで触れた通り、6条の活用に積極的な国は、6条下のクレジット(ITMOs)移転に向けて案件形成や必要な国内体制の整備等、具体的な進捗を見せています。その積極的な国の一つが、JCMパートナー国でもあるタイです。タイはこの度、6条下の対象となる活動リストを国内向け政策文書の中で発表(link)しましたが、その活動の範囲とNDCの範囲が合わず、取り扱いについて考察しました。

