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パリ協定6条4項におけるリバーサルの取り扱いに関する議論

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2025年08月 Methodology Updates (2/2)

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sustainacraft
Aug 29, 2025
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パリ協定6条4項におけるリバーサルの取り扱いに関する議論
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株式会社sustainacraftのニュースレターです。

Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。今回は、パリ協定6条4項メカニズムで議論されている「非永続性/リバーサル(反転)」への対処に関する基準ドラフトと、それに対して寄せられたパブリックコメントについて解説します。

お問い合わせはこちらまでお願いいたします。


はじめに:厳密性と実行可能性のバランス

パリ協定6条4項メカニズムの運用ルール策定が進む中、基準の厳密性とプロジェクトの実行可能性のバランスをどう取るかが大きな議論となっています。特に、炭素除去プロジェクトにおける「リバーサル(一度固定した炭素が再放出されること)」への対処法は、プロジェクトの実務的なコストや、資金調達可能性に直結する重要な論点です。

先月、6条4項メカニズムの下でのリバーサルの取り扱い基準のドラフトが公開され、パブリックコメント (以下、パブコメ)が実施されました。これに対して、特に森林保全などNbS(Nature-based Solutions, 自然由来の解決策)に関わるプロジェクト事業者や研究機関から多くの懸念が表明されました。以前のニュースレターで紹介したベースライン基準案への意見は数件だったのに対し、今回は100件以上もの意見が寄せられていることからも、その反響の大きさが際立っています。

様々な意見がある中で本稿で注目するのは、Climate FocusのCEOのStreck氏らの見解です。Streck氏は長年REDD+や自主的炭素市場の研究を行っている研究者です。Climate FocusはVerraの最新のREDD+方法論であるVM0048の作成に関わった組織の一つでもあります。

後ほど説明しますが、現在のドラフトでは厳格性の異なる2つのアプローチが提示されており、MEP (Methodology Expert Panel, ドラフトを担当する専門家集団)の大多数はより厳格なアプローチを指示しています。それに対して、Streck氏は自身のSNSの投稿で次のように述べ、MEPの多数派が支持する案に強い懸念を示しました。

「多数派」草案には著しいセクター偏重があり、その結果、自然由来の従来的な二酸化炭素除去(CDR)プロジェクトを第6.4条から事実上排除しようとする露骨な試みが見受けられます。これは極めて問題です。なぜなら自然由来CDRは、(A) パリ協定の目標達成に不可欠であり、したがって協定の長期気温目標の達成にとっての整合性を担保する上で不可欠であり、(B) 慢性的に資金不足に陥っているからです。さらに、(C) 公平性の観点も重要です。自然由来手法やNbS(自然に基づく解決策)を第6.4条から事実上排除することは、先住民族や地域コミュニティ(IP&LCs)が第6.4条から利益を得る機会をほぼ消し去り、また後発開発途上国が協力的アプローチから恩恵を得る能力を著しく損ないます。

この主張は多くの示唆に富むと思われます。Climate Focusはパブコメにも正式に意見を投稿していますので、本稿では、このClimate Focusが提出したパブコメ(以下、CFコメント)を援用しつつ、新しいドラフトの論点を紹介します。

注:以下でパブコメ全体の傾向に対して言及している箇所は、大規模言語モデルによる自動分析のため、間違いや見落としがある可能性があることにご注意ください。


ドラフトの主要な論点とパブコメの内容

パブコメの参加者の内訳

まず具体的な内容に入る前に、簡単にコメントを投稿した組織の内訳を見てみましょう。今回は合計で109件のコメントが寄せられています。大雑把な分類ですが、多い順に以下のようになっています。

  • プロジェクト開発者: 33件

  • 国際機関・NGO: 32件

  • 大学・研究機関: 12件

  • 金融: 10件

  • 環境コンサルティング: 8件

  • 政府機関: 7件

  • その他: 7件

プロジェクト開発者については、大部分がNbSプロジェクトの開発者のように見受けられました。政府機関は、各国の環境省や林野庁に当たる省庁が多く、REDD+などNbSを進める主体と思われます。金融は、カーボンファイナンスを行っている組織が多い印象です。

全体像:2つの対立するアプローチ

ドラフト

まず、今回のドラフトで特徴的なのは、MEP内で意見がまとまらず、2つの代替案が併記される形で公開された点です。具体的には、以下の2つのアプローチを記載し、ドキュメント冒頭のカバーノートにおいてそれぞれに対する論点を言及するという形式となっています。

  • アプローチ1(附属書1&2, MEP多数派案): 方法論開発者向けの基準 (附属書1)とプロジェクト参加者向けの基準 (附属書2)から成る、より詳細で厳格な案。

  • アプローチ2(附属書3, MEP少数派案): プロジェクト参加者向けの基準に一本化した、比較的シンプルな案。方法論開発の手順は含まない。


パブコメ

MEPは、どちらのアプローチが良いかをパブコメで意見を募るという方針を取りました。これに対しCFコメントでは、そもそもMEPがこのような大きな方針に関わる判断をパブコメに委ねるという形式は望ましくないと指摘しています。また、NbSを推進するCFの立場としては、基本的にNbSプロジェクト推進の観点から附属書1&2は受け入れられるものではなく、附属書3をベースに進めるべきとしています。ただし、附属書3にも改善すべき点は多く、部分的に附属書1&2のやり方を推奨している箇所もあります。

パブコメ全体の傾向を分析すると、アプローチ2が圧倒的多数の支持を得ています。アプローチ1を支持した組織は、主に大学や一部のNGOで、その理由として科学的な厳密性や堅牢性を挙げています。アプローチ2を支持した組織は、プロジェクト開発者(NbS)、金融機関、多くのNGO、そして複数の政府機関など、幅広い層に及びます。これらの組織は、アプローチ1の無期限のモニタリング(以降のセクションで説明)などの要件が非現実的で、特に自然由来のプロジェクトを市場から排除してしまう可能性を強く懸念しています。彼らはアプローチ2をより実用的でバランスの取れた出発点として評価しています。

これ以降では具体的にドラフトの中で、(特にNbSの)プロジェクト実装にとって重大な障壁となるとされる次の3つについて見ていきます。

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