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Isometricの新しい風化促進モジュール

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2025年08月 Methodology Updates (1/2)

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sustainacraft
Aug 20, 2025
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Isometricの新しい風化促進モジュール
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株式会社sustainacraftのニュースレターです。

Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。本記事では、最近Isometricが新しく公開した、風化促進タイプのプロジェクトに対する新しいモジュールである、「閉鎖型人工システムにおける風化促進("Enhanced Weathering in Closed Engineered Systems"、EW-CES)モジュール」を紹介します。

EW-CESは、閉鎖された管理環境下で鉱物原料を風化させることを通じて、炭素を固定する新たな方法を示しています。農地に原料を散布することに依存する自然ベースの風化促進アプローチ(EW-Ag)とは異なり、このモジュールは、鉱物の組成や反応速度といった変数を厳密に管理できる、人工的な環境設定での二酸化炭素の定量化と貯留に焦点を当てています。これにより、風化の速度論やセンサー開発のための管理された研究環境をサポートし、下流での炭素損失のより厳格な定量化を促進することによって、屋外の農業環境における風化促進プロジェクトが抱えているMRV(測定、報告、検証)の課題に対する解決策の一つとなるかもしれません。

本稿では、まず背景として現在の主流である農地における風化促進(EW-Ag)プロジェクトの概要を紹介し、そのMRVの課題について説明したうえで、EW-CESがそれをどのように解決しようとしているのかを紹介します。また、EW-AgとEW-CESの関係についても考察します。

背景

農地における風化促進(EW-Ag)の科学的根拠と強み

風化促進("Enhanced weathering"、EW)とは、自然に存在する炭素を固定する地球化学的プロセスを加速させる炭素除去アプローチです。 岩石中のケイ酸塩鉱物や炭酸塩鉱物 (玄武岩、石灰岩など)は、風化と呼ばれる化学プロセスにより、周囲のCO2や水と反応することで時間をかけて分解されます。 このプロセスは、CO2を重炭酸塩に変換し、最終的には海に運ばれ、そこで溶存無機炭素 (水に溶けた形の無機炭素)として数万年にわたって貯留され得ます。 農業の文脈(EW-Ag)では、このプロセスは、細かく砕いた岩石(通常は玄武岩)を農地に散布することによって実施されます。そこでは、水分、植物の根、微生物の活動に助けられ、土壌や大気中のCO₂と反応します。

EW-Agは、他の自然由来の解決策(NbS)アプローチに比べて、炭素固定法としていくつかの利点があります。第一に、EW-Agは耐久性が高いことが特徴です。 植林や土壌有機炭素プロジェクトでは、火災、病気、または土地利用の変化によって貯留された炭素が再放出される可能性がある一方、EW-Agは鉱物炭酸化を通じて地質学的な時間スケールでCO₂を恒久的に除去します。 これは、多くのNbSに共通する反転リスクを回避しやすいことを意味します。この点については、以前のニュースレターで紹介したバイオ炭とも共通します。

バイオ炭の概要と方法論の比較

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sustainacraft
·
Jul 30
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第二に、EW-Agは他のプロジェクトタイプと比較して、リソースの競合が小さいと考えられています。まず、既存の農地に適用できるため、土地利用の競合リスクが低く、したがって食料安全保障への影響が小さいと考えられています。結果として、他の地域への森林伐採の転移といったリーケージリスクも低減します。 加えて、EWは必須栄養素を補給し、土壌の酸性度を低下させることで土壌の健康と作物の収量を改善することができ、食料安全保障をむしろ強化する可能性もあります。これらの利点はバイオ炭と共通していますが、原料の競合という観点では、バイオ炭の原料であるバイオマスと比較して、EW-Agの原料である鉱物は(少なくとも現時点では)他の活動との原料の競合は大分緩やかであると考えられています。

第三に、EW-Agは農地管理(ALM)プロジェクトに比べて、実行上の障壁が低いです。 EW-Agプロジェクトでは、原料の散布を日常的な農作業に統合することができ、農家が従来の慣行を大幅に変更する必要がありません。 一方で、ALMプロジェクトでは、土壌に追加的に炭素を閉じ込めておくために、農家が農法を恒久的に変更することがしばしば求められます。

農地における風化促進(EW-Ag)の課題

EW-Agは炭素除去戦略として大きな可能性を秘めていますが、質の高い炭素クレジットを確実に創出するためには、いくつかの課題に対処する必要があります。 これらのうち最も重要なのは、風化プロセスを通じて除去されたCO₂の量のMRVの難しさです。ここでは、反応速度の異質性、限られた現場計測機器と分析コスト、そして不確実な下流での挙動という3点を紹介します。

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