株式会社sustainacraftのニュースレターです。今回はMonthly Methodology Updatesとして、主に2023年10月に発表されたVCSの方法論に関するニュースを中心にお届けします。
Monthly Methodology Updates
今月は以下の内容をカバーします。
新しいARRの方法論の公開: VM0047(Verra)
新しいALM方法論を利用した初めてのVCSプロジェクトが登録完了 (Verra)
VCS Standardに関連する修正と追加説明を発表 (Verra)
Haya et al. (2023)に対するVerraの反応 (Verra)
2023年10月16日のNew Yorkerの記事に対するVerraの反応 (Verra)
最後のKariba(VCS902)案件に関しては、より詳細な当社の見解について興味がある方は別途ご連絡ください。
(1) 新しいARRの方法論の公開: VM0047(Verra)
(link)
ARRの方法論の大きな改訂となるVM0047 Afforestation, Reforestation, and Revegetationが先月正式に公開されました。VM0047ではVCS方法論の中で初めて、Dynamic Performance Benchmarkと呼ばれる方法を採用しています。これは、マッチングと呼ばれる因果推論手法に基づき、プロジェクト外の参照地域における事後的な観測値を用いてベースラインを推定するものです。また事後的な植生の変化は衛星画像を用いてモニタリングすることを前提としています。
弊社のニュースレターではこれまでも因果推論的アプローチを導入することの必要性について触れてきましたが、REDDとARRという違いはあるものの、その基本的な考え方は共通しています。プロジェクト実施側の調査負担を減らしつつ、ベースラインの信頼性を高めることを目指した重要な改訂と言えそうです。
以下ではVM0047における重要な考え方をいくつか解説します (画像やグラフの出所はWebinarのスライドです)。
方法論の構成
VM0047の構成を表したのが下の図1です。
ベースラインおよび吸収量の計算方法についてはArea-based approachとCensus-based approachの2種類があります。Area-based approachが今回の改訂の主題であるdynamic performance benchmarkを採用するもので、以下では主にこちらを解説します。Census-based approachは小規模の土地所有者向けにより簡易に計算を行えるように設計されたもので、実地調査を前提としています。こちらは特定の条件を満たせばベースラインはゼロとされます (Census-based approachについては今回は触れません)。
どちらの方法を採用するとしてもリーケージの評価を行う必要があり、こちらは関連モジュールであるVMD0054 Module for Estimating Leakage from ARR Activitiesに詳述されています。こちらについても以降で説明します。
利用上の注意点として、本方法論はマングローブ植林など干潟(tidal wetland)におけるプロジェクトは対象外とされています。干潟におけるプロジェクトに対してはVM0033 Methodology for Tidal Wetland and Seagrassを利用する必要があります。他にもいくつかの適用条件がありますが、詳しくは方法論本文を参照して下さい。