株式会社sustainacraftのニュースレターです。今月もVCS方法論に関するニュースはあまり多くありませんでした。そこで今回は、昨年改訂があったARRの新しい方法論のうち、特にリーケージに注目して掘り下げたいと思います。また、先月に引き続き生物多様性に関する話題も取り上げます。
お知らせ
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【日時】2024年2月26日(月)16:00~18:00
【会場】オンライン(Zoom) ※オンラインのみ受付中
Monthly Methodology Updates
今月は以下の内容を紹介します。
(1) リーケージに着目したARR方法論の比較
(2) 生物多様性クレジットに関するアップデート
(3) 泥炭湿地林向け方法論の無効化 (Verra)
(1) リーケージに着目したARR方法論の比較
2023年の9月、Verraの地上部でのARRプロジェクトの新しい方法論であるVM0047 Afforestation, Reforestation, and Revegetation, v1.0が発表されました。これは既存のCDMの方法論であるAR-ACM0003: Afforestation and reforestation of lands except wetlands (Version 2.0)を置き換えるもので、動的パフォーマンスベンチマーク(=ベースライン)の導入、リーケージモジュールの刷新など、いくつかの大きな変更がありました。弊社でも以下のニュースレターで取り上げています。
今回は、その中でもリーケージの取り扱いについてさらに掘り下げたいと思います。
AR-ACM0003でもリーケージに関する要件はありましたが、実際には定性的な評価に留まっているケースが多かったり、マーケットリーケージは考慮されないなど、あまり厳格なものではありませんでした。実際、現時点で登録済みのARRプロジェクトの多くはAR-ACM0003を用いていますが、正のリーケージをカウントしているケースは殆どありません。
一方で、VM0047ではリーケージに関してより定量的かつ保守的な評価が求められます。またマーケットリーケージも考慮する必要があります。2024年2月20日時点では登録済みのVM0047プロジェクトはなく、パイプラインに載っている7件のプロジェクトでもリーケージに関する情報があるプロジェクトはまだ僅かですが、それでも正のリーケージを計上しているプロジェクトがすでに存在します。
今後、高品質の除去系クレジットの需要がさらに高まると予想されるなかで、リーケージの評価は重要な論点の一つとなると考えられます。
そこで、以下ではAR-ACM0003とVM0047におけるリーケージの考え方をそれぞれ紹介した上で、実際のプロジェクトにおける例も考察してみます。