株式会社sustainacraftのニュースレターです。今回はMonthly Methodology Updateとして、主に2023年7-8月に発表されたVCSの方法論に関するニュースと、Plan Vivoによる生物多様性クレジットの方法論に関する最近の議論を中心にお届けします。
Monthly Methodology Update
今月は以下の内容をカバーします。
カーボンクレジットの必要性に関するVerraの記事(Verra)
ICVCM Core Carbon Principlesの改定に対するVerraの反応(Verra)
Wetlandを含むREDDプロジェクトの方法論の改定 (Verra)
Rainforest Foundation UKによるREDD+への批判レポートについて (RFUK, Verra)
生物多様性クレジット方法論の改定案(Plan Vivo)
(1) カーボンクレジットの必要性に関するVerraの記事(Verra)
(link)
カナダのブリティッシュコロンビア州で大規模な森林火災により甚大な被害が生じていることが連日報道されています。リンク先の記事でVerraは、このニュースを引き合いに出しつつ改めて自然由来のカーボンクレジットが気候変動対策に果たす役割についての見解を述べています。以下で要点を紹介します。
カーボンクレジットの有効性を議論する際の重要な観点の一つとして永続性(Permanence)があります。森林保護に由来するカーボンクレジットに批判的な人々は、森林は火災などによる消失のリスクから永続性の観点で問題があるため、炭素貯留先として適切でないと主張しますが、Verraはそのような批判に対して以下の2つの観点から反論しています:
バッファープールの利用により100年先を見据えたリスクコントロールをしている
カーボンクレジットを利用してオフセットをする企業はそうでない企業と比較して脱炭素化のスピードが約2倍早い
1点目は永続性への批判に対する直接的な反論です。森林保護由来のカーボンクレジットを批判する人々の論拠は、人為的に排出された二酸化炭素は大気中に300-1000年に渡って残存するが、様々な自然災害のリスクを考慮すると森林が上記期間に渡って存在し続ける可能性は低いため、クレジット発行は適切でないと考えます。
これに対してVerraは、バッファープール(non-permanence buffer pool)によりそれらのリスクをコントロールできると主張しています。VerraのVCS (Verified Carbon Standards)のすべてのプロジェクトは、プロジェクト開始から100年間後までに想定されるあらゆるリスクを勘案して、プロジェクトから創出されるクレジットの一部をバッファープールに供与することを求められます。プロジェクト開始後に実際に災害が起きて炭素排出があった場合には、相当する排出量がバッファープールから差し引かれ、さらに排出量がバッファープールを上回る場合は、プロジェクトで創出されたクレジットから不足分を補填する必要があります。これまで実際にVCSプロジェクトで大規模な火災が発生したのはBigCoast Forest Climate Initiative プロジェクト(ID: 3018)だけであり、それもプロジェクトエリアの0.25% (=100/40,000Ha)に過ぎないため、600万tCO2とも推定される現在のカナダの森林火災による排出量と比較すると十分に小さいとしています。