株式会社sustainacraftのニュースレターです。今回はMonthly VCM Updateとして、主に2023年5月に発表されたボランタリーカーボンクレジット市場・海外規制に関するトピックを中心にお届けします。
Monthly VCM Update
今月は以下の内容を紹介します。
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向
Trove Researchのレポート: “Corporate emission performance and the use of carbon credits”
B. 海外の主要規制の動向
Zimbabwe: 国内カーボンクレジット契約の即時無効化宣言
Delta Airlinesの環境主張に対する集団訴訟
Engineering-based Removalについての議論
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 (Verra)
2023年5月はVerraボランタリーカーボンクレジットでは12,844,883ユニットが新たに発行され、6,267,040ユニットがリタイアされました。それぞれ前年同月比-1%、-10%と減少しています。
AFOLU(Agriculture Forestry and Other Land Use)セクターに限ると2,936,112ユニットが発行され、2,996,204ユニットがリタイアされています。それぞれ前年同月比-50%、-5%となっています。
2023年5月にリタイアされたプロジェクトの一覧(AFOLUセクターのみ)です。上位20件のプロジェクトでリタイアメント全体の8割を占めています。国別ではBrazilが最大(46%)で、その後をIndonesia(10%)、Peru(10%)、Cambodia(9%)、Uruguay(4%)が続いています。
Verra AFOLUセクターのカーボンクレジットをリタイアした企業のTOP 20社は以下の通りです。Energy, Consulting, Manufacturing, Postal Service業界がリタイアをしています。
A-1: Trove Researchのレポート: “Corporate emission performance and the use of carbon credits”
(出所: Trove Research)
Trove Researchが6/1に、Corporate emission performance and the use of carbon creditsというタイトルでレポートを出しました。カーボンクレジットについて常に議論になっている、「カーボンクレジットの購入は企業にとっては「排出許可証」(レポートでは”license to pollute”)になっている」という点に対して、定量的な検証を試みています。
結論としては、上記の主張を否定する結果となっています。具体的には、カーボンクレジットを利用している企業は、そうではない企業と比べて、有意に自社の排出削減が進められている、ということが定量的に示されています。産業や企業の地域を問わず、この傾向は確かめられています。全体平均では、平均的な排出量の削減度合いが、カーボンクレジットを利用している企業の「-6%」に対し、利用していない企業は「-3%」という結果です。
分析のアプローチとしては、2017年から2022年における各企業のスコープ1及び2の排出量変化を計算し、これから得られる排出量削減率と各企業のクレジットの購入量との関係を分析する、というシンプルなものです。上記の「カーボンクレジットを利用している企業」の定義としては、年間で100tCO2eのクレジットを使用し、スコープ1と2の排出量の少なくとも5%を使用した企業、とされています。
なぜ、カーボンクレジットを購入している企業が、より早く自社の排出量の削減も実現しているのでしょうか。このレポートでは、カーボンクレジットを購入する企業は、自主的に排出量に価格をつけているため、と考察しています。つまり、自主的な目的でも、カーボンクレジットを購入してオフセットしている場合に、自助努力で排出削減を進めれば進めるほど必要となるカーボンクレジットの調達量は少なくすむことになり、自社排出量削減に向けた企業の投資や予算の承認プロセスにおいて、そのような取り組みを進めるのに役立っている、と述べられています。
B. 海外の主要規制の動向
このセクションではボランタリーカーボンクレジットの用途・品質や、森林・自然資源の保護に関する重要な規制のUpdateについて報告します。