株式会社sustainacraftのニュースレターです。本記事はVCM Updates(ボランタリーカーボンマーケットのアップデート)のセクションB(海外の主要規制の動向編)です。
本記事では、以下の2つのトピックを扱います。
Verra: C-Quest Capitalによる調理器具案件からの過剰発行分500万ユニットの無効化を決定
Verra: Rimba Raya(VCS-674)案件のアップデート
C-Quest Capitalという世界最大規模のプロジェクト開発者が、意図的に過剰に発行したとされるクレジットについて、その過剰分とされる500万ユニットを本プロジェクト開発者が全量補償することが発表されました。本件は、炭素市場における品質リスクを示す新たなネガティブなニュースではありますが、この500万ユニットという数字が妥当な形で計算されている限りにおいては、これまでこれらの案件から創出されたクレジットを利用(償却)してきた利用者側が責められるべきものではないと考えます。
Rimba Raya案件については、今年5月のニュースレターでも、コンセッションライセンスがインドネシア政府環境林業省(MOEF)によって取り消されたとして紹介していました。今回の記事では、その後のアップデートについてお伝えしていきます。本件自体は、プロジェクト開発者であるInfiniteEarth社と、投資家であるCarbon Steaming社の間での話ではあるものの、元々の発端であるコンセッションライセンスの取り消しについては、インドネシアの政策リスクを表しているものと考えます。
依然として、大規模な案件が複数登録されているインドネシアからのクレジット発行は止まっている状態が続いていますが、今年中にこのモラトリアムも解除されるという見方もあり、まもなく開始されるCOP29の中でのインドネシア政府からの発表に注視していきます。
Verra: C-Quest Capitalによる調理器具案件からの過剰発行分500万ユニットの無効化を決定
出所: BusinessWire(2024.6.26), Verraの発表(2024.6.26), 米国SECの発表(2024.10.2) IC-VCMの発表(2024.10.3), Verraの発表(2024.10.17)
«背景»
C-Quest Capital(以降CQC社)は、世界最大規模のプロジェクト開発者の1つで、VMR0006というVCSの方法論(調理器具など)を中心に世界各国で案件を開発しています。
米国連邦検察当局は、数百万の炭素クレジットと1億ドル以上の投資を確保するために排出削減データを改ざんしたとして、C-Quest Capital LLCの元CEOでオフセット業界の重鎮であるケネス・ニューコムを詐欺の罪で起訴しました。ケネス・ニューコムは、世界銀行やゴールドマンサックスなどを経てC-Quest Capitalを2008年に設立。2007年から2023年12月までは、Verraの取締役も務めていました。
SECからの発表によると、罪に問われているのは、過剰なクレジットを発行したこと自体ではなく、CQC社の株式を売却する上で、過剰クレジットの発行により、利益を上げながら持続的に炭素クレジットを創出する過去と将来の能力に関して、投資家を欺いたとしています。結果的に、2023年初頭に2億5,000万ドルの株式売却に至っています。
CQC社内部での調査を経て、2024年2月初旬には、ジュールス・コーテンホースト氏を新CEOに迎え、今回の件はCQC社から米国連邦法執行機関、規制当局、およびVerraに対し、審査結果を自主的に報告したという経緯です。Verraでのレビューが完了してから取り消しをするため、CQC社はこの時点で暫定的に、影響を受けると想定されるクレジットを別口座に移管したと発表しています。
今後は、内部でのガバナンスを強化するために、IC-VCMによるCCPラベルを取得していくことも検討されています。これに対して、ICVCMは、関連する調理器具方法論の評価は進行中であり、進行中の評価についてはコメントしないと述べています。
ちなみに、現時点で調理器具関連での方法論にてCCPの審査対象となっているのは、CDMベースの方法論、VerraのVMR0006、Gold Standardの方法論など複数が対象となっていますが、まだ審査結果は発表されていません。
«今回の発表»