株式会社sustainacraftのニュースレターです。Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。
※ 本記事は前回の続編です。まだ読まれていない方は、先にこちらをご参照ください。
本記事では、上記記事の続きで、以下の2つ目の内容を扱います。
Standard: Application of the requirements of Chapter V.B (Methodologies) for the development and assessment of Article 6.4 mechanism methodologies
Standard: Requirements for activities involving removals under the Article 6.4 mechanism
Standard: Requirements for activities involving removals under the Article 6.4 mechanism
(link)
6条4項における、吸収・除去を伴う活動に関するスタンダードを紹介します。4章が項目ごとの要件を規定するセクションになっていますので、その部分を中心に紹介するともに、3章で書かれているコンテキストの部分をまずは先に説明して行きます。
<3章: Context of removals under this standard>
まず、Removals(吸収・除去)の定義としては、IPCCのAR6 WG3(第3作業部会)における定義が参照されており、以下のように書かれています。
二酸化炭素除去(CO2; CDR)とは、大気から二酸化炭素を除去し、地質、陸上、海洋貯留層、または生産物に持続的に貯留する人為的活動のことである。これは、生物学的、地球化学的、化学的CO2吸収源の既存および潜在的な人為的強化を含むが、人間活動に直接起因しない自然CO2吸収は除外される。
Activities involving removals(吸収・除去を伴う活動)としては、この後説明する、4章の要件を満たすもの、とされています。
<4章: Requirements>
大きな章立てとしては、以下の通りです。
1: モニタリング
2: 報告
3: クレジット期間後のモニタリングと報告
4: 吸収・除去量の算定
5: 更新されたクレジット期間に適用される方法論
6: 反転への対応
7: リーケージの回避
8: 環境・社会的な悪影響の回避、人権の尊重
以降、前回の記事同様に、原文の流れをそのまま紹介しつつ、当社のコメントについてはブロックでの記述として切り分けて表現します。
4.1 モニタリング
SCコメント:
・まず第一に、ベースラインがクレジット発行量の最重要な要素であった排出削減系の活動に対して、吸収・除去系の活動においては、ベースラインはゼロと想定できるケースが珍しくありません。一方で、プロジェクトシナリオにおける吸収量の算定が、発行されるクレジット妥当性における最大の論点となります。
・そのため、吸収・除去系の活動では、事後的なモニタリングが正確にかつ保守的に行われることが重要となります。
・この4.1のセクションでは、モニタリングに関する要件が定められています。
・ここで書かれていることについては、現状のボランタリーな炭素クレジットのメジャーな方法論では概ね満たしていると考えられます。
・なお、非永続性リスクの評価や先住民に対する十分な情報に基づく同意(FPIC)のような項目は、現状はボランタリーのスタンダードにおいては、方法論レベルというよりも、Verraにおいては「非永続性評価ツール」や「VCS Standard」など、より上位レベルでの要件として整備されているケースが一般的です。
(11) 活動参加者は、測定、サンプリング、リモートセンシング、第三者の情報源、公表された文献から得られたデータに基づいて除去量のモニタリングを実施しなければなりません。データは、堅牢で統計的に代表性があり、保守的でなければならず、関連する不確実性を適切に考慮する必要があります。
(12) メカニズムの方法論には、除去活動の種類に応じた除去量の計算に必要なすべてのパラメータのモニタリング方法を具体的に規定する条項を含める必要があります。
(13) 正味除去量は、関連する不確実性を適切に考慮して、保守的な方法で計算する必要があります。
(14) モニタリングの柔軟性を確保するため、デフォルト値を使用することができます。ただし、デフォルト値を使用した場合でも、正味除去量の保守的な推定値が得られるようにする必要があります。
(15) 適切な品質保証および品質管理対策に関する条項を含める必要があります。例えば、モニタリング結果と他のデータソースや公表された文献との照合、または測定機器の定期的な校正などが挙げられます。
(16) 4.6.1 反転リスク評価で特定されたリスク、および持続可能な開発ツールで特定されたリスクをモニタリングおよび軽減するための条項を含める必要があります。 これには、活動の影響を受ける先住民の自由意思に基づく、事前の十分な情報に基づいた同意を得ることが含まれます。
(17) 活動参加者は、登録申請書とともに提出するプロジェクト設計文書の一部として、モニタリング計画を提出することを義務付ける条項を含める必要があります。 モニタリング計画は、各クレジット期間の開始時に見直しと更新を行う必要があります。 以下のいずれかの状況においても、モニタリング計画の見直しと更新を行う必要があります。
指定運営機関 (DOE) または監督機関が、モニタリング計画およびリスク評価計画に関する懸念事項に基づいて、モニタリング計画の改訂の必要性を特定した場合。
反転後に、モニタリング計画およびリスク評価計画に含まれていない、または適切に対処されていない追加のリスク要因が特定された場合。
適用される国内または地域の規制により、モニタリング計画およびリスク評価計画に含まれていない、または適切に対処されていないリスク要因を考慮する必要がある場合。
4.2 報告
SCコメント:
・「モニタリングレポート」の要件が書かれています。
・例えば、植林案件におけるモニタリングとは、実地調査を行なった場所(プロット)の情報や、そこでの実測データ(胸高直径や樹高)などが挙げられます。
・これらの実測データは、「モニタリングレポート」において、含まれていないことが現状のボランタリークレジットにおいては一般的ですが、この条項では、完全なデータセットへのアクセス方法を書くことまで求められています。
・そのほかの条項は特に新しいものではなく、反転が起きた場合にも「モニタリングレポート」を提出することなどが要求されています。