株式会社sustainacraftのニュースレターです。
Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。本記事では、VerraのネイチャークレジットであるNature Frameworkについてのアップデートを紹介します。
「炭素(カーボン)クレジット」というのは炭素便益が定量化の対象となっているのに対して、生物多様性を定量化の対象とするクレジットは「生物多様性クレジット」と呼ばれています。Verraでは、これを(生物多様性クレジットではなく)ネイチャークレジットと呼んでいますが、その方法論として現在開発が進められているNature Frameworkについてのアップデートを本記事では扱います。
別のカーボンスタンダードであるPlan Vivoにおける生物多様性クレジットのPVBCs(Plan Vivo Biodiversity Certificates)と比べると、VerraのNature Frameworkはモニタリングがしやすい方法論である印象がありましたが、今回のパブコメではより種数や個体数の測定が求められる方向の意見が多かったようです。
なお、これまでの本ニュースレターでの生物多様性に関する記事はこちらで概ねまとまっていますので、よろしければ合わせてご参照ください。
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VerraのNature Frameworkに関するアップデート
(link)
ネイチャークレジットに関する方法論であるNature Frameworkに関してアップデートがありました。昨年から行われていたパイロットプロジェクトとパブコメの結果が公開されており、ここでのフィードバックを踏まえた改定案(Nature Framework ver1.0)が今年の後半に発表される予定です。
ここでは、(1) パイロットプロジェクトと(2) パブコメについて、それぞれ概要を紹介します。
なお、Nature Frameworkの現時点でのドラフトについてはこちらの記事にて説明しています。特に生物多様性の定量化にて用いられるCondition Indicator(以降、状態指標と表現します)やReference Values(以降、基準値と表現します)といった概念は以降のパブコメの紹介でも出てきますので、以下を読む前に、一度上記の記事を先に読んでいただくのをお勧めします。
定量化について、簡潔に示すと、生物多様性を示す「状態指標」を複数選択し、それを「基準値」で標準化したものがその時点における評価値となります。これがベースラインに対してどの程度大きいかが生物多様性クレジットの算出対象です。
(1) パイロットプロジェクト
パイロットプロジェクトには179件の申請があり、結果的に以下に示す通り合計31のプロジェクトが対象として選定されました。アフリカが最も多く12件、次にアジア、南米が5件です。熱帯・亜熱帯林の案件が半数を占め、海洋及びサバンナ/草地の案件がそれぞれ19%、 16%、その他は温帯林や低木林の案件のようです。