パリ協定6条2項・6条4項定期アップデート/JCMフィリピン森林ガイドライン採択、COP30
2025年11月 VCM Updates Section B: 炭素関連政策動向ハイライト
株式会社sustainacraftのニュースレターです。本記事はVCM Updates(ボランタリーカーボンマーケットのアップデート)のセクションB(海外の主要規制の動向編)です。お問い合わせはこちらまでお願いいたします。
本記事では、2025年10月から11月にかけて発表された主要な炭素関連政策の動向に関し、以下の項目に沿ってお伝えします。
毎月お届けしているパリ協定6条2項、6条4項に関する動向サマリの他、フィリピンJCMで採択されたJCM森林ガイドライン一式、COP30速報として6条4項の議論ポイントについて解説します。
はじめに
政策動向
パリ協定6条2項(二国間協力)
パリ協定6条4項(パリ協定クレジットメカニズム(PACM))
非国家主体のイニシアチブ
各国炭素関連政策
考察記事
フィリピンでJCM森林ガイドライン一式を採択!
【COP30速報】6条4項、実装フェーズでの「厳格性」vs. 自然系ソリューションへの配慮?
キーワード: 6条, 二国間協力,PACM, JCM, フィリピン, COP30
本記事は、ミシェル・アピア(Business Development Manager)と梅宮知佐(Carbon Specialist)が執筆しています。
1. はじめに
今月、COP30がブラジル・ベレンで開催されています。その影響もあって、6条周りで動きが活発です。シンガポールとペルーは、二国間協定の下、Gold StandardとVerraを対象にペルーにおける緩和プロジェクトの募集を開始しました。タイとインドネシアもVerraとGold Standardと協力し、プロジェクト適合性の確認に向けた準備を進めています。このように政府間の取組みと自主的アプローチが一体感を増しています。
JCMでも幾つか主要な動きがありました。日本とタイのJCMで、初めて両国は、JCMクレジットをITMOsとして承認し国際移転を行いました。また、フィリピンとのJCMでは、森林ガイドライン一式が採択されました。A/R(植林)に重点を置いた本ガイドライン一式の採択は、自然系プロジェクトを行いたい日本企業にとって、既に森林ガイドラインが整備されているカンボジア・ラオスのREDD+だけでなく、植林型JCMプロジェクトも検討できるオプションが広がりました。なぜ、今フィリピンでA/Rが重視されるのか、国情に沿った植林活動のタイプや実施要件を考察記事で解説します。
6条4項でも、監督委員会が初めて、埋立地からのメタン削減を対象とした方法論を承認するなど、進展がありました。不透明感が残ったままの自然系プロジェクトの扱いについては、COP30でも注目を集めており、本記事の考察記事で議論のポイントを紹介します。実装フェーズにおける緩和行動を促すための自然系ソリューションへの配慮と、それに対して国際的に求められるクレジットの質に対する基準の厳格性が焦点だと考えます。
2. 政策動向
6条2項
先月は、ブラジル・ベレンで開催されるCOP30に向けた機運の高まりを背景に、6条2項の協力体制を実現するための取り組みが加速しました。既存のパートナーシップやカーボン市場への参加実績を持つ国々の間では、以下のような動きがありました。
シンガポールとペルーは、2025年4月に締結した二国間実施協定の下で、プロジェクト募集を開始しました。
開発者は、ITMO(国際的に移転された緩和の成果)の創出を目的としたGold StandardまたはVerraの緩和プロジェクトをペルーで提出することができます。今回の募集では、自然由来の方法論はわずか2件、メタン削減やサーキュラーエコノミー分野が優先されています。
それでも、ペルーは森林面積7,200万ヘクタール(国土の53%、世界第9位)を有する主要な森林炭素供給国であり、ARRおよびREDD+案件が出る可能性は十分にあります。
ガーナは、2020年に締結したスイスとの実施協定の下、2億ドル規模の屋上太陽光発電事業を開始します。これまでのクリーンプロジェクトの多くが調理用かまどや小規模な効率改善事業であったことを踏まえると、本事業はArticle 6に基づく最大級のクリーンエネルギー案件の一つになる見込みです。
アジア太平洋地域では、複数の国がクレジットの信頼性向上と6条2項 への対応強化に向けた取り組みを進めました。
日本とタイは、JCM(二国間クレジット制度)の下、「工業用水貯水池における5MW浮体式太陽光発電システムの導入」プロジェクトから創出されたクレジットをITMOsとして承認、初の国際移転を行いました。
タイとインドネシアは、Verra および Gold Standard と正式に協力し、国際的に認められた基準へのプロジェクト適合性の確認に向けた支援を受ける体制を整えました。
マレーシアは、既存の CDM(クリーン開発メカニズム) プロジェクトを新しい PACM(パリ協定クレジットメカニズム) へ移行する方法を検討しています。
カーボン市場の経験が限られる国々でも、6条2項の活用が進み始めています。
モーリタニアは、グリーン水素プログラムに加え、再エネ、エネルギー効率、廃棄物管理、交通、アグロフォレストリー、生態系回復などの分野でパートナーシップを求める 6条2関連のNDCを発表しました。同国の排出削減ニーズの約96%が国際資金に依存していることから、6条2は戦略的に重要です。
クウェートは、西アジア諸国の6条2メカニズムへの準備を加速するための地域対話を開催しました。
6条4項
PACMでは、先月大きな進展がありました。第6条4項監督委員会は、埋立地からのメタン削減を対象とした初のクレジット方法論を承認しました。これにより、追加性を確保するための段階的なクレジット発行アプローチが導入され、影響評価や意図しない排出への対応ルールも整備されました。
また、監督委員会は永続性、追加性、CDM事業のPACMへの移行に関する判断も示し、一定の柔軟性を持たせつつ、いくつかの複雑な論点は先送りとなりました。一方で、自然由来案件には依然として不透明感が残ります。早期のクレジット化に必要な主要な方法論の策定は数年先となる見込みで、多くのデベロッパーが当面は他市場を検討する可能性があります。
非国家主体のイニシアチブ
ICVCM:新たに6つの炭素除去方法論及び持続可能な農業の方法論を承認
ICVCM(自発的カーボン市場インテグリティ評議会)は10月上旬、VCMを高い完全性を持つ除去プロジェクトへと進めるべく、6つの新たな炭素除去方法論をCCP(Core Carbon Principles)下で承認しました。
Gold Standard – Carbon Sequestration Through Accelerated Carbonation of Concrete Aggregate (v1.0)
Isometric – Biomass Geological Storage, Bio-oil Geological Storage (v1.0-1.1)
Isometric – Subsurface Biomass Carbon Removal and Storage (v1.0)
Isometric – Biogenic Carbon Capture and Storage (v1.1)
Isometric – Direct Air Capture (v1.1)
また、VerraやCARといった主要レジストリによる持続可能な農業の方法論も、追加条件と共にCCPの下で承認しました。対象となる方法論はU.S. Soil Enrichment Protocol v1.1とVM0042 Improved Agricultural Land Management v2.2です。前者に対する追加条件は、40年間の永続性コミットメントと、輪換放牧や集約放牧を行わないこと。後者に対しては、土壌有機炭素(SOC)の測定手法が、許容されている測定手法のうち、本決定下では未評価のデジタル土壌マッピング(DSM)以外の測定手法であることです。
なお、VM0042 Improved Agricultural Land Management v2.2については、以下、今月の方法論アップデートのニュースレターで詳しく解説していますので、ご関心のある方はご覧下さい。
Carbon Measures:透明性向上を目指す新たな炭素会計イニシアティブ


