株式会社sustainacraftのニュースレターです。本記事はVCM Updates(ボランタリーカーボンマーケットのアップデート)のセクションA(市場動向編)です。
«VCM Updatesの構成»
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 ← 本記事の対象
クレジット発行・償却・投資動向分析
プロジェクトパイプライン分析
詳細解説セクション
自然由来案件への投資案件
クレジット償却企業のケーススタディ
B. 海外の主要規制の動向
はじめに
クレジットの発行・償却・投資動向、及び、案件パイプライン動向について
1月のクレジットの発行・償却実績は、前年同月比でいずれも減少しています。全体的な傾向としては、以前は発行・償却の多くを占めていた VCS の割合が減少し、Gold Standard やACR といった他のレジストリによる発行・償却割合が大きくなってきている傾向が引き続き観察されています。
投資動向としては、自然再生系では、Microsoft や Tencent といった大手テック企業による大型のオフテイク契約が目立ちました。またCDR系では、GoogleやShopifyによるバイオ炭やERW(Enhanced Rock Weathering:岩石風化促進)を対象にしたオフテイク契約が発表されています。1月のニュースレターでも紹介しましたが、CDR系への投資が活発になっている傾向が引き続き見られます。
新規の案件パイプラインについて、12月のパイプラインに追加となった5件はこれまでの傾向通り、VM0047やVM0042といった、ARRやALMの方法論を用いた案件でした。1月のパイプラインとしては、PNGのARRとリベリアのREDDでした。
クレジット償却企業のケーススタディ
本ニュースレターでは、B2C製造業による償却ケーススタディを紹介します。B2C製造業には最終製品を消費者に提供するさまざまな業界(化粧品、食品・飲料、パーソナルケア・家庭用品、たばこ等)が含まれます。B2C製造業全体のクレジット償却は、2021年に急増し、その後もその水準を維持しており、中でも直近1年間(2024年1月~2025年1月)における償却が多かった Natura & Co(化粧品)、Maple Leaf Foods(食品・飲料)、Church & Dwight(パーソナルケア)の3社を紹介します。3社ともにカーボンクレジットを活用したオフセットに積極的な姿勢を見せていて、B2C製造業全体としてクレジット償却には一定の傾向が見られましたので、この背景には何があるのかについても解説します。
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 (Verra)
A-1: クレジット発行・償却・投資動向分析
- 分析対象レジストリー: VCS(Verra)、GS(Gold Standard)、CAR(Climate Action Reserve)、ACR(American Carbon Registry)、Puro (Puro.earth), Isometric
- 対象期間: 2025年1月
- 留意事項: 償却した企業について、レジストリーに対して実名での登録は義務付けらておらず、正確性は保証できない旨ご了承ください。また、レジストリーへの反映には遅れがありますので、今後も本対象期間中について案件の増減やステータス変更の可能性があることにご留意ください。
本対象期間の発行・償却実績は以下のとおりです(括弧内は前年同月比)。
発行実績: 15.2百万(-14%)、うち自然由来2.76百万(-19%)
償却実績: 16.26百万(-20%)、うち自然由来6.26百万(-34%)
<発行された案件リスト>
以下は、本対象期間にクレジットが発行されたプロジェクトの上位10件です。
<償却された案件リスト>
本対象期間に最も多く償却されたトップ10の自然由来プロジェクトの一覧は以下の通りです。
<償却企業リスト>
対象期間中に自然由来プロジェクトのクレジットを償却した上位10社は以下の通りです。これまでニュースレターで紹介してきていない消費財業界から、Church & Dwightが4位にランクインしています。そこで、今月のニュースレターではB2C製造業に焦点を当て、具体的な事例として、Natura & Co(化粧品)、Maple Leaf Foods(食品・飲料)、Church & Dwight(パーソナルケア)を紹介します。
<自然由来プロジェクトへの投資動向>
- 対象期間: 2025年1月
- 留意事項: 自然再生やREDD+、及び、自然由来系のCDR案件に対する投資を取り上げています。また、「クレジット量」や「投資額」については、今後の想定値である場合があります。
1月には、自然由来とCDRのプロジェクトへの重要な投資が8件ありました。
A-2: プロジェクトパイプライン動向
分析対象レジストリー: VCS(Verra)、GS(Gold Standard)
対象期間: 2025年1月
留意事項: レジストリーへの反映には若干タイムラグがあるため、今後本対象期間についても案件の増減やステータス変更の可能性があることにご留意ください。
用語: 年間ERとは、年間の排出削減・吸収量(tCO₂e)のことを指します。
このセクションでは、まず新しいパイプラインプロジェクトを紹介し、その後、前回のニュースレターに反映されていなかった先月のパイプラインでの重要な変更点をレビューします。
<今月分パイプライン>
自然由来プロジェクトのパイプラインには、以下の2件のプロジェクトが含まれています。
<前月パイプラインの重要変更点>
先月のニュースレターでは、12月のパイプラインに合計14件のプロジェクトが含まれていました。しかし、最新のデータ更新後、新たに5件のプロジェクトが追加されました。推定年次ERが最も高いのは依然としてVCS-5382であり、これは前回のニュースレターで取り上げたアラブ首長国連邦の植林プロジェクトです。
A-3: 詳細解説セクション
このセクションでは、前述で紹介した償却企業や投資案件、パイプライン案件についての一部案件について、より詳細な解説をしています。
<自然由来プロジェクトへの投資動向>
このセクションでは、先月に発表された自然由来案件への投資に関する内容について紹介します。