株式会社sustainacraftのニュースレターです。今回は主にGold Standardが現在開発しているマングローブ植林プロジェクトの新しい方法論を取り上げます。最近では除去系のクレジットの中でも特にマングローブの植林プロジェクトに対する関心が高まっており、高品質とされるプロジェクトのクレジットは高値で取引されるケースもあるようです。これまで弊社では主にVerraの方法論を取り上げてきましたが、異なる方法論も理解することで、クレジットの品質を考える際の視点が広がるのではと思います。合わせて、VCS方法論関連のニュースもいくつか簡単に紹介します。
Monthly Methodology Updates
今月は以下の内容を紹介します。
(1) 新マングローブ方法論へのパブリックコメント募集 (Gold Standard)
(2) プロジェクト処理時間の公開と目標値の設定 (Verra)
(3) SOC分析ツールのALM方法論への統合 (Verra)
新マングローブ方法論へのパブリックコメント募集 (Gold Standard)
(link)
Gold Standardは2024年の3月7日から4月5日の間で、現在開発中のマングローブ植林プロジェクトの方法論であるMethodology for sustainable management of mangroves v1.0へのパブリックコメントを募集しています。
Gold Standardの既存の植林プロジェクト方法論であるMethodology for A/R Greenhouse gases (GHGs) Emission Reduction and Sequestration v2.0 (以下、A/R方法論)でもマングローブ植林はカバーされていますが、マングローブに特有の諸条件を考慮するために、それに特化した方法論を開発するのが目標のようです。特に、マングローブの植林においては1)植林適格エリアの特定が重要であること、および2)成長後は林内へのアクセスが悪く実地調査の負荷が高い、という問題意識から、リモートセンシングデータの積極的な利用を目指している所がポイントです。
以下では、Verraのマングローブプロジェクト方法論であるVM0033 Methodology for Tidal Wetland and Seagrass Restoration, v2.1とも比較しつつ、上記の2点を中心にこの新しい方法論を特徴を説明します。
(特段記載のない引用、画像はすべて冒頭リンク先の方法論のドキュメントが元です)
植林適格エリアの特定
本方法論の対象は、原生種、もしくはそれに相当すると判断されるマングローブの植林です:
Eligible activities include:
Reforestation (planting) of native mangrove trees.
Reforestation (planting) of mangrove-associate tree species that have been identified as historically related to native mangroves in the project area (based on peer-review information, global datasets or participatory historical land-use analysis).
そのため、植林できる場所は過去にマングローブの自然林が存在していた土地のみとしています。
本方法論では土地に関する4つの概念が登場します:
プロジェクトエリア (project area):プロジェクトのオーナーの管理下にあるエリア。適格エリアと非適格エリアに分けられる。
適格エリア (eligible areas): プロジェクトエリア内の植林可能なエリア。
非適格エリア (Non-eligible areas): プロジェクトエリア内の植林不可能なエリア。
参照エリア (reference area)1: プロジェクト開始の少なくと10年以上前にマングローブの自然林が存在していた場所。プロジェクトエリア内の適格エリアを含む必要あり。
適格エリアを特定するためにリモートセンシングデータを用います。具体的には、以下の5つのステップを実行します。