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VCSのALMプロジェクトにおけるBGCモデルの利用方法

2025年04月 Methodology Updates (2/n)

Apr 24, 2025
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株式会社sustainacraftのニュースレターです。

Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。本記事では、ALMプロジェクトにおける生物地球化学モデルのキャリブレーションやバリデーション方法を示したVerraのモジュールであるVMD0053について説明します。

お問い合わせはこちらまでお願いいたします。


VCSのALMプロジェクトにおけるBGCモデルの利用方法

(主な出典: VMD0053 Model Calibration, Validation, and Uncertainty Guidance for Biogeochemical Modeling for Agricultural Land Management Projects, v2.1)

はじめに

Verraは2025年3月26日にALM (Agricultural Land Management)におけるBGC (Biogeochemical: 生物地球化学)モデルの利用方法に関するガイダンスである、VMD0053のv2.1を発表しました。

BGCモデルとは、生態系内での炭素、窒素、水などの物質の循環を数理的に表現するモデルです。気候・土壌・植生・人間活動などの影響を考慮しながら、物質の動態をシミュレーションすることができるため、ALMプロジェクトでは、農地の利用方法の変化によるGHG排出削減・吸収量の定量化の一つの方法として用いられます。

水田における物質の循環の概念図。BGCモデルはこれらの物質の入出力関係を数理的に表現する (出典: 国立研究開発法人 農業環境技術研究所)

BGCモデルを用いて信頼性の高い推定を行うためには、モデルのキャリブレーション (観測値に合うようにモデルのパラメータを調整する作業)とバリデーション (キャリブレーションされたモデルの精度評価)が欠かせません。しかし、そのためには専門的な知識が必要であり、かつデータの選択などに恣意性が入り込まないようにする必要があります。したがって、それらの作業を標準化するためのガイドラインがVMD0053になります。

今回の改訂はv2.0からv2.1へのマイナーアップデートであり、変更点はわずかです。具体的には、これまでVMD0053はVCSのALM方法論であるVM0042でのみ使用されるモジュールでしたが、最近公開された水田向けの方法論であるVM0051でも使用できるように文言を修正したことが主な変更点となります1。ALMは、農地の利用方法の改善によりGHG排出量の削減・吸収を行う様々な活動を指す一般的なカテゴリーであり、VM0042では水田における活動もカバーしています。しかし、その焦点はSOC (Soil Organic Carbon: 土壌有機炭素)の増減にあるため、水田においてより主要なGHGであるCH4 (メタン)やN2O (亜酸化窒素)の定量化にフォーカスした方法論がVM0051になります。VM0051の主な活動対象はAWD (Alternate Wetting and Drying: 間断灌漑)ですが、それ以外の水田における活動も対象としています。VM0051の詳細については以下のニュースレターをご覧下さい。

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2025年03月 Methodology Updates (1/n)
株式会社sustainacraftのニュースレターです。…
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2 months ago

水田でのAWDプロジェクトは、JCMなどにおいても短期的には有力なクレジット供給源と考えられていますが、実測のコストの高さによるスケールしにくさが課題として指摘されています。具体的には、実測には閉鎖式チャンバーで取得したサンプルを分析する必要がありますが、サンプル取得のための人件費とサンプルの分析費用がプロジェクトエリアの面積や水田施業の異質性に応じて増加します。よって、広域的でのAWDプロジェクトの普及には、モデルによるGHGの定量化が重要な役割を果たすことが期待されています。

現時点ではJCM方法論でモデルの利用は認められていませんが、ボランタリー市場での利用促進をうけ、今後JCMでもモデル利用の議論が進む可能性があるかもしれません。その意味で、VMD0053でのモデル要件や限界を理解しておくことには意味があると考えます。

以上を念頭におきつつ、本ニュースレターではVMD0053の中身について詳しく紹介します。

VMD0053 v2.1の要件

まず、VMD0053の下でモデルを用いてGHGの定量化を行う際のステップの全体像を示したのが下の図です。図の中にはVMD0053で対応する章が記載されています。Section 1-3と6以降はサマリーや補足的な内容になるため、本体部分はSection 4と5になります。この図をみるとわかる通り、バリデーション (“Model validation”)の箇所が充実しています。実際、VMD0053では、モデルの選択やキャリブレーションについての具体的なガイダンスはほとんどなく、適切なバリデーションを行うためのデータセットを選び方と、バリデーション時に満たすべき精度要件が主な内容となっています。

以下は各ステップのサマリーです。

  • 適用可能条件 (モデル選択)

    • 第三者によるモデルの利用可能性、信頼性、再現性が求められる

    • ある程度実績のあるモデルを選択すれば特に問題なし

  • モデルのキャリブレーション

    • 具体的な方法に関するガイダンスはない

    • データの利用方法には注意が必要 (クロスバリデーションはできない)

  • モデルのバリデーション

    • バリデーションに使えるデータセットに細かい要件が設定されている

      • これを満たすデータセットを見つけられるかが課題

    • 精度については、バイアスがないこと、予測区間が正しく計算されていることが求められる

これらについてより詳細を見ていきましょう。

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