株式会社sustainacraftのニュースレターです。
Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。本記事では2点のアップデートを扱います。一つは2025年5月に発表されたVerraのARR(Afforestation, Reforestation, and Revegetation)方法論であるVM0047 v1.1へのマイナーアップデートについて、その主要な変更点と影響を解説します。今回の改訂では、特に既存植生の再生を促すタイプのプロジェクト(Assisted Natural Regeneration)を明確に対象とした変更が加えられた点が特徴です。もう一点は、Gold Standardが新しく公開したSOC方法論のモジュール(果樹園のバイオマス残渣を散布することによるSOC増加)について紹介します。
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Verra ARR方法論VM0047のアップデート
<出典>
Verra Publishes Minor Revision of ARR Methodology, VM0047 (2025年6月25日アクセス)
Verraは2025年5月、ARRプロジェクトのための主要な方法論の一つであるVM0047のマイナーアップデート版(v1.1)を公開しました。この改訂は、プロジェクトの適用範囲を拡大し、モニタリングの柔軟性を高めることで、より多くのARRプロジェクトの組成を促すことを目的としています。VM0047については過去のニュースレターでも紹介していますので、合わせてご覧ください。
今回の改訂では、特に劣化した森林の回復や小規模な植林プロジェクトへの対応力が強化されました。以下では、主要な4つの変更点について、変更前後の内容とデベロッパーへの影響を解説します。
1. 既存森林における自然回復(ANR)活動の許容
変更前 (v1.0):
方法論の適用条件では、既存の森林がある土地でのプロジェクト活動は限定的でした。Area-basedアプローチを取る場合は、1ha以上の連続した森林被覆を生成する必要があり、既存の樹木が多い場所での活動の解釈が不明瞭でした。また、Census-basedアプローチを取る場合は、明確にANR(Assisted Natural Regeneration)タイプの活動は禁止されており、直接的な植林のみが対象となっていました (Area-based、Census-basedについては下のセクション参照)。
変更後 (v1.1):
既存の森林がある土地でもANRのようなプロジェクト活動を実施できるようになりました。ただし、プロジェクト開始前の10年間に当該森林が木材製品のために管理されておらず、木材製品のための伐採も行われていないことが条件となります。
影響:
この変更は劣化した森林の回復を目指すプロジェクトにとって追い風となります。純粋な新規植林だけでなく、既存の生態系を活用し、その回復を促進するタイプのプロジェクト(例:侵略的外来種の除去、土壌改良による自然再生の補助)もクレジット創出の対象となり得ます。これにより、デベロッパーはより多様な土地でARRプロジェクトを計画できるようになり、生物多様性の保全にも貢献する質の高い森林再生プロジェクトの組成が期待されます。