株式会社sustainacraftのニュースレターです。Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。今回はVerraが最近開発を進めている新しい追加性評価ツールについてご紹介します。
クレジットの質の議論に関して、弊社のこれまでニュースレターでは主にベースラインの恣意的な設定によるクレジットの過大発行という観点から紹介してきましたが(参考1, 参考2, 参考3)、追加性も質を議論する上で重要な観点です1。追加性が主張することは、プロジェクトエリアでGHGの排出削減/吸収がなされたのはカーボンクレジットの仕組みが存在したためであり、そのプロジェクトから創出されたクレジットは気候変動の緩和効果と直接的な関連がある、ということです。従って、プロジェクトが追加的であることは、クレジットの発行が、いわゆるグリーンウォッシュになっていないことの必要条件になります。
これまではCDMの追加性ツールが主に用いられていましたが、必ずしも有効に機能しているとは言えない場合も多く、登録済みのプロジェクトでも追加性に問題があると懸念されるケースが散見されました。しかし、ICVCMのCCP適格を得るうえでもこの追加性が一つの論点となっており、今後高品質なクレジットを議論する上で追加性の理解は欠かせません。
本ニュースレターでは、Verraが先月に公開した新しい追加性ツールのドラフトを紹介することを通じて、追加性評価の考え方の概要もご説明できればと思います。
今回の追加性ツールの改訂により、これまでは「追加性がある」とされていた案件も、改訂された追加性ツールの元では追加性が認められない案件が多くありそうです。特にNbSにおいては、伐採を伴う単一樹種の商業植林案件で、追加性があるとは認められるべきではない、と当社が考える案件もこれまでは複数存在していました。このような案件と、原生樹種で伐採を部分的にしか伴わない植林案件も、同じ「植林案件」と括られて取引されているため、相対取引とはいえ、これまでは取引価格が大きくは変わらない状況になっていました。今回の追加性ツールの改訂で、CCPラベルにも明確に反映されることで、よりコストのかかる原生樹種植林のような案件からのクレジットに適正な価格がつく流れになると望ましいと考えます。
お問い合わせはこちらまでお願いします。
Verraの新しい追加性ツール
(出所: Consultation: New VCS Tools for Additionality, 2024/09/27 アクセス)
Verraは先月、ICVCMのCCPへの対応を念頭においた新しい追加性評価ツール(以下、新ツール)のドラフトを公開し、9月23日までそれに対するパブリックコメントを募集することを発表しました。
2024年7月にICVCMから出されたレポートでは、VCSで利用されているRenewable Energyの方法論 (複数あるが全てCDM)はCCP適格として認められませんでした2。認められなかった原因の一つとして、CDMの追加性ツールに問題にあることが指摘されています。ICVCMはレポートでCCPのAssessment Frameworkの要件を満たすように方法論を改訂することを推奨しているため、今回のVerraのアナウンスはそれへの対応と考えられます。
今後、新ツールで以下のCDMツールを置き換えることが想定されています: