株式会社sustainacraftのニュースレターです。本記事はVCM Updates(ボランタリーカーボンマーケットのアップデート)のセクションA(市場動向編)です。
本セクションでは、2024年6月の償却企業の1つとしてBooking.comを運営しているBooking Holdingsを紹介します。先月のニュースレターでは、マイクロソフトを中心とした米国テック企業群の植林など吸収系クレジットへの大規模な投資・クレジット調達の動きを紹介しましたが、消費財サービス系の企業も海外に目を向けるとカーボンクレジットの調達・償却を一定程度すでに実施しています。
消費財サービス企業は、GHG排出の95%以上をScope3占めているケースが多いですが、Scope3の排出に対してクレジット調達を宣言することで、サプライヤー・取引先へのエンゲージメントを強化して、排出削減を加速するという流れが起きているように見受けられます。
一方で、クレジットを利用した際に、どのような主張を自社のサービス・商品として対外的にアピールしていくかについては注意が必要です。先月もEUのグリーンクレーム指令の内容を紹介しましたが、ここで紹介するBooking Holdingsについても、「Travel Sustainable」というプログラムの運営において、オランダ消費者市場庁から、誤解を招く環境主張であるという指摘を受けています。詳細は以下本編をご参照ください。
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«VCM Updatesの構成»
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 ← 本記事の対象
クレジット発行・償却分析
プロジェクトパイプライン分析
B. 海外の主要規制の動向
A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 (Verra)
A-1: クレジット発行・償却動向
- 分析対象レジストリー: Verra、GS(Gold Standard)、CAR(Climate Action Reserve)、ACR(American Carbon Registry)
- 対象期間: 2024年6月
- 留意事項: 償却した企業について、レジストリーに対して実名での登録は義務付けらておらず、正確性は保証できない旨ご了承ください。また、レジストリーへの反映には遅れがありますので、今後も本対象期間中について案件の増減やステータス変更の可能性があることにご留意ください。
本対象期間の発行・償却実績は以下のとおりです(括弧内は前年同月比)。
発行実績: 24.86百万(-18%)、うち自然由来 2.35百万(-84%)
償却実績: 10.58百万(-6%)、うち自然由来 3.00百万(-21%)
<償却された案件リスト>
本対象期間に償却された自然由来プロジェクトの一覧は以下の通りです。上位20件のプロジェクトで、償却全体の約82%を占めています。
最初のプロジェクトはTahuamanu Amazon REDDプロジェクト(償却量の27%を占める)です。ペルーの森林伐採回避プロジェクトであり、VM0006の方法論の下で実施されています。この方法論はモザイク状およびランドスケープ規模のREDD+プロジェクトに適用されます。VM0006は、新しいREDD+の方法論VM0048でカバーされる方法論の1つです。VM0048に関する詳細情報については、当社の2023年12月の方法論ニュースレターをご参照ください。
<償却企業リスト>
本対象期間で自然由来案件のクレジットを償却した上位20社は以下の通りです。最も多くのクレジットを償却したの企業はBooking Holdingsです。次に、VistaJetとNetflixが続きます。このニュースレターでは、Booking Holdingsの戦略に焦点を当て、Netflixについても簡単に触れます。Netflixは先月のニュースレターでも紹介しました。
企業ケーススタディ
Booking Holdingsについて
(以下、主な出典は[1], [2], [3]をご参照ください。)
Booking Holdingsは、アメリカに拠点を置いており、旅行予約サービスや検索エンジンを提供する会社です。現在、Booking Holdingsには、Booking.com、Agoda、Momondo、Kayak、OpenTable、Cheapflightsなど、多くのウェブサイトが含まれています。
このセクションでは、Booking Holdings(以降”Booking”)に関して以下の内容をカバーします。① ネットゼロ目標(消費者行動の予測を含む)、②3つのコミットメント、③カーボン・クレジット・ポートフォリオ(6月の償却を含む)。
Bookingの2022年に提出された気候行動計画によると、パリ協定に準拠し、2030年にほぼゼロ、2040年にネットゼロを目指しています。